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朽葉が堕ちる、真白の行方
 真也さんが思うような、いい子じゃないですよ?
 息をのんだ。ごくりと、音を鳴らして。自分にしては珍しく、動揺と興奮の入り混じった息だった。いままでのらりくらりと、普通の「まともな人間」のふりをして、のうのうと生きてきたのに。ふりだけはずいぶんと上手くなって、まともだったころの自分は思いだせはしないけれど。
 このわずかな変化を、彼女に気づかれてはいないだろうか。生きていくために身につけた処世術のひとつである微笑みは、焦燥する内心と違って安定している。しみついたものといっても相違はないだろう表情は崩されることはない。
「ねえ、真也さん。引っかかっても、いいですか?」
 目がくらむかと思った。おそらく、自分がこの場にいるほかの男であったなら、真っ先に陥落していたであろう手管の類。この合コンの間に、何度同じ思いを抱いたか、目の前の少女は知る由もない。
 か細い理性をかき集めて周囲を見渡せば、酒におぼれて伏せる人の影。驚くほど多い数に、奥底に眠っている性癖の血が騒いだ。口元がゆがむ前に、この場から去らなくては。慣れ親しんだ警鐘が鳴る。こういうときは理性に従ったほうがいいと、長年の感覚が告げている。
 視線を戻すと、不思議そうにかしげられた青藍と目があった。この手をほどいてしまうのはもったいない。けれど、いまは振りほどかなくてはならない。包んでいる手にくちびるをよせ、気障ったらしく再び片目をつむる。
「引っかかってもらえるのはとても嬉しいんだけどね。どうやら、時間みたいだ」
 周囲へ視線を誘導すれば、彼女は実に残念そうにため息を吐いた。完全につぶれてしまっている人数の多さと、彼らの対応に追われている店員。退室をうながされていることは、傍目に見ても明らかだった。
「何人かはタクシーが必要かもしれないね」
「あーあ、せっかく真也さんとふたりっきりになれるチャンスだったのに」
「そう言ってもらえるのは心から嬉しいよ。……機会があったら、今度はふたりでデートでもしようか」
 腰をかき抱いて、そっと耳元でささやく。連絡先は交換したのだし、チャンスはこれからいくらでもめぐってくる。生き生きと目を輝かせる少女をみながら、ポケットに入れたままの携帯の電源をいれた。
 これから、逃げることの許されない用事が待っている。あの真っ白な部屋のなかで、なにも知らなかった弟がただひとり眠っているのだ。これから知ることになる弟は、困惑するだろうか、嫌悪するだろうか。それでもすべて覚悟して、自由に生きてきたのだ。いまさら、逃げ腰になったりはしない。
 ただ、弟に失望はされたくないと思った。ひどく身勝手な感情だ。
Twitter創作うちよそ「それが僕らの愛だから」より。前:白蛇誘う闇の先
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Author:空野海
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生誕:2月14日

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