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枯葉に濡れる瞳の色は
「真也さん」
 みずみずしい果実がごとり、落ちた音がした。そんなふうに呼ぶ人物がこの場にいただろうかと内心、首をかしげて、ほんのり頬を染めた女性とは別方向から聞こえた声の主をみやる。
 驚いた、というのが素直な感想だ。触れるか触れないかの絶妙な距離感を保ったまま、見知った少女は赤らめた顔でこちらを見あげている。整った輪郭をふちどる漆黒の糸は、店内の橙色のライトに照らされて艶めかしい雰囲気をかもしだしていて。
「真也さん、あたしともお話しましょ」
 にこりときれいすぎる笑みを浮かべ、サワーをつかんでいた手に彼女の手が重ねられる。視界の端で唇を噛みしめ、こちらを睨む紅色と目が合う。さっと目をそらされたものの、瞳にあからさまな羨望がにじんでいたことを捉えた。
 実際、彼女はいわゆるモテる部類に入るのだろう。先ほどの笑顔など、弟に爪の垢でも煎じて飲ませてあげたいくらいには完璧なものだった。自分も笑顔はずいぶんと自然にできるほうだと思っていたけれど、彼女の笑顔は自分の比ではない。慣れているのだ。そういったよそいきの顔をつくることに。
 もしかして、と。脳裏によぎった考えにかぶりを振って、そんなことはないだろうと青藍を覗きこんだ。
「もちろんだよ。でも、いいの? さっきまで別の子と話していなかった?」
「そうだけど、話がひと段落したんです。あたし、初めての人と話すのちょっとだけ苦手で。真也さんなら知り合いだし、息抜きになるかなって。だから真也さんも、息抜きだと思って付き合ってくれませんか」
「なるほどね。その気持ちはわからなくもないかな。僕、すごくアウェイだしね。話しかけられなければ、ただ食事していようと思っていたから」
「なに言ってるんですか、真也さんを狙ってる子だっているんですからね!」
 ちらり、彼女の視線が反対側に向けられる。それが先ほどまで話していた女性に対してだと認識するのに、時間はかからなかった。つまりは、牽制だ。
 不満げに唇をとがらせている女性にまたあとでねと微笑んで、近くの男子学生に誘導する。様子をみるに相当、酔っているようだったから、あとでなんてないだろう。こちらの話が落ちついたころに戻ったとしても、彼女はつぶれているに違いない。
「さあ、なんの話をしようか」
 きらきらと輝く星空を目にいれて、悠然と微笑んだ。
Twitter創作うちよそ「それが僕らの愛だから」より。前:木の葉は夜空に舞い降りて
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空野海

Author:空野海
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生誕:2月14日

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