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しろつめくさを手に、僕を愛していると言っておくれ
最後でいいのだ。君の言葉を耳にするのは。
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■愛していること
うららかな春の陽気だった。フランス窓を開け放つと、窓縁に飾られたパンジーの匂いが香る。深く息を吸いこめば頭も冴えて、朝陽が時計塔を神々しく照らしているのも見てとれた。伸びをして、もぞり衣擦れの音に反応すれば、おぼろげなまなこでぼんやりと空を向く姿を確認できる。おはよう、そう声をかけるとゆっくりと視線をあわせてくるターコイズの双眸。視線が絡み、やわらかく細められた宝石にどきりと胸が高鳴って、ベッドサイドに腰をおろせば伸ばされる手のひら。「……おはよう」かすれた声に言いようのない喜びを抱くのは、自分だけではないと思いたい。激しくしすぎたね。ゆるやかな曲線のかわいらしいでっぱりに口づける。そんなことない、抗議の言葉すら空気を震わせても霧散して、無理に話さなくていいよとくちびるを制した。のっそり、シーツの波からずるずると這いでてきた彼は、ベッドヘッドの時計を見つめる。いつもはきれいにまっすぐ固定されている金髪が、シーツに乱されいくつもの筋をつくっていて、目元の赤みも加わり、艶かしい雰囲気を醸しだしている。たまらないねと思ったはずが声に出ていたらしく、なにがだと流し目をあてられて、愛しているってことさとささやいた。
■しろつめくさ
小指にまきついたのは、しろつめくさの茎。鼻歌をうたいながら器用にまかれていくその茎は、なんだか少しくすぐったい。「できた!」満足した満面の笑み。まかれた小指を見やると、二重になって結ばれた茎、そして指を覆い隠す白い花。そよ風にゆらゆらとやさしく揺れるその様に、小さく微笑みがこぼれた。「おそろい」にっこりと笑った相手の右の小指にも同じもの。指きりげんまん嘘ついたら針千本のーます、なんてけらけらと笑いながら上下に振る彼から離れることはないのだろうなと、桃色に染まる脳裏で密かに思った。
■できるなら苦労はしない
いまでさえ、大方のことは自分でこなせるようになった。けれども、できないことはまだいくつもあって、それがくやしいのだ。手先も人当たりも器用なほうではないけれど、かといって不器用なわけでもない。可もなく不可もなくと庭師には笑われたが、平均が一番いいに決まっている。はあ、大きなため息を吐く。広くはない屋敷であるはずなのに、主である少年はいまだに見つけられない。かくれんぼなどしている場合ではないのだ。大変だな、庭師が笑う。他人事だと思って。できないことはたくさんある。努力でどうにかなるものならばいくらでも努力しよう。けれど、だとしても、少年を見つけだすことはどんなにがんばっても無理なのだろうなと思わざるをえなかった。
■最後は僕と
心中してください、なんて、言葉にできるはずもない。薄暗い水族館のなかを裸足で歩く。さまざまな人種が、生き物が、生きたままの姿を保って弔われているここは、あまりに不気味で異様なのだろうと薄れてしまった常識で思う。きれいだとも、美しいとも感じる自分は、一般的な常識の感覚からずいぶんと外れてしまった。迷いこんでからそれほどの時間は経っていないはずなのに、順応がはやいのは褒められたことなのだろうか。「お兄様!」愛する妹の甲高い声が館内に響く。手招きをして、満面の笑み。――いつか、いつしか離れてしまうのならば。このままいっそ、この水族館で、自分と彼女を永遠にしてくれたらいいのにと思ってしまった自分に嫌気がして、いまいくよと「おとなしい兄」の皮をかぶる。
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空野海

Author:空野海
since:2009.3.21
生誕:2月14日

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