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皮肉に残るはましろな世界
ふたつのお題は選択式御題様より。いとしいぼくの白よ。
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■それでも皮肉なことに世界は終わらないし終われないのだ
「馬鹿みたいだと思わないかい」つぶやいた言葉に、前を歩く青年は立ちどまらずになにがだと言った。あたりは薄暗い空にのみこまれ、宵闇が迫っている。砂利道を一歩、また一歩と踏みしめて歩く。足元も見えなくなる前に、ひと休みできる場所を探さなければと青年が焦っているのはこちらにも伝わっていた。「馬鹿みたいだ」つい先ほどまで見ていた景色が離れない。脳裏にこびりつくこの記憶は、過去に一度、自分が経験しているものと等しいからか、そのいやな思い出を呼び起こしてくる。理不尽な仕打ち、鼻につく焦げついた匂い、脳髄を刺していく断末魔。すべてが鮮明によみがえってきて、すさまじい嘔吐感に襲われた。「……気持ちが悪い」たすけて、とは口に出さない。助けを求めれば彼は介抱してくれるだろうが、それでは甘えてしまう。手を伸ばせば手をさしのべてくれる存在がいることに安堵して、自分が弱くなっていくのは歴然だった。心臓がせわしなく早鐘を刻んでいる。視界がかすんでぐらりと身体が傾いた。咄嗟に近くの木の幹に手のひらをつき、身体を支えるものの、頭は真っ赤に染まってしまっている。気持ちが悪い。ぼやける目で見た手は笑ってしまうくらい小刻みに震えていて、振り払うように強く握りしめた。「アレクシス」ついてこない足音に気づいたのか、彼が振り向く気配がする。大丈夫と声にすることすらできなかった。ぽんぽんとあたたかい手のひらが背をたたく。いつもそうだ、彼はなにも言わないし聞くこともない。他人への気遣いができる男だと感心したのはいつだったか。そんな気遣いに救われていたのは、いつだって自分だ。緋色の海だった脳内が、だんだんとクリアになっていく。嘔吐感も薄れ、呼吸も整ってきた。心配そうに覗きこんでいるピーコックブルーに映る自分があまりに弱っていて、思わず笑ってしまう。心配してやったのにと眉をひそめる彼に小さく謝って、かぶりを振ってから木から手を離した。視界はぐらつかない、前は随分とはっきりしている。大丈夫だ。おもむろにため息を吐いて、彼は再び歩きだす。後ろをついていきながら、空を見あげた。空気の澄んだ晴天だった。
■人間の骨と同じいろ
「兄貴はなんでその色に染めたんだよ」首をかしげる相手に内心いらっとしつつ、乱雑に髪を引っ張った。定期的に染められている髪は根元こそ地毛なものの、ほとんど真っ白に染まってしまっている。痛い痛いとギブアップの仕草をしながら笑う兄に、いらだちは募っていく。「たっくんはこの色、好きじゃないの」「年寄りみたいだろ」「ひどい」毎朝のセットによって絶妙な髪のボリュームを出している白い髪を指先でくるくると弄ぶ。僕は気に入っているよと、右目がかかるように顎まで伸ばされた前髪の、赤いメッシュの入った一部をつまんで、にっこりと笑った。「……それに、骨と同じ色だ」付け足して告げられた言葉に、兄はそうだねと軽く答える。「生きる色じゃないか。僕は好きだよ」奇抜な色のうちに入るのだろう白髪は、赤と並んで生きるための色だと。だから両方、髪の毛に使ってみたんだと。そんな理由かよと呆れれば、理由なんて些細なものだよとココアを啜る音がする。俺は、と口にして、言いかけた言葉をのみこんだ。
■世界の終わりに乞い唄を
その日の夕暮れは、いままで見たことがないくらいに真っ赤に燃えていて、思わず立ちどまってしまった。たなびく雲すら太陽に燃やされているようで、その様がうつくしいともおそろしいとも思えて。しばらくぼうっと見つめていたからか、不機嫌な声がかけられる。「さつき」もう帰らないと。ぐいっと強く手をひかれ、ずんずんと歩いていく彼に足をもつれさせながらも引きづられていく。おぼつかない足取りのなか見あげた夕暮れは先ほどと変わらない。この空を、なんと称したらいいのだろう。なにをたとえにしたら、誰にでも伝わる表現になるのだろう。「あ」そうだ、いつか読んだ昔の書物にあった、世界の終わりが近いかもしれない。世界が終わってしまうときの空は、こんな感じなのかも。ふと、前を歩く少年の背を目で追いかける。幼くもなぜか力強く思えてしまう背中をしっかりと見据えれば、なんだか泣きたくなってしまった。――世界が終わるとしたならば。僕は間違いなく、君を乞うのだろうなと。影法師もまた、赤く燃えている。
■泣けない子 でも胸はかしてあげない
シェリルは常々、強くなりなさいと諭してきた。力ではなく精神面を。権力を振りかざすのではなく人望を。それは教育機関で教えられたことでもあり、今後の彼の将来のためにも必要だと信じてきたからだ。人望がなければ人は動かず、この世界で生き残るためには他人の協力が必要不可欠なのだと、シェリルは幼いながらに身に染みて理解していた。かわいげのない子供だったに違いない。空想に夢見るよりは現実を見据えるリアリスト。非現実的なことを嫌い、自分の目の前にあるものだけを愛してきた。考えるより行動しなさい。シェリルの口癖だった。仕えているお屋敷の子息と同じ、シェリルも泣くことをしなかった。ただ、子息と違ったことは、彼は泣くことを許されない立場だったということだ。座学にはじまり、馬術が礼儀作法、貴族として必要なありとあらゆる知識を詰めこまれ、幼い彼は泣き言をこぼしたこともある。そのたびに大人たちはなだめていたが、シェリルだけは甘やかさなかった。自分ができたのだから彼にも、なんて思いがあったことも否定はしないが、シェリルは彼が泣かないことを知っていた。慰めてほしいのではない。できたらできた分だけ、褒めてほしいのだと。泣き言は横へ流して、仕切りなおしとばかりに手をうつ。ぱんぱんと軽やかな拍手が響くたび、彼が笑うこともシェリルは知っていた。そうして同じ言葉を、彼にふりかけるのだ。「強くなりなさい」
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空野海

Author:空野海
since:2009.3.21
生誕:2月14日

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