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恋する五題そのに
お題はcapriccio様より。君はいつだってずるい。
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01.唇に雨垂れ
「濡れている」連絡がきてからの帰りが遅いと思っていたら、どうやら天気雨に遭遇してしまったらしい。玄関先で申し訳なさそうに目尻を下げながら、ぽたぽたとしたたる水をタオルで拭き取っていた。「まさか降るとは思わなくてな」「予報でも言ってなかったしね、仕方ないよ」風邪をひく前にシャワーでも浴びてきたらどうだい。バスルームを示しながら、キッチンへ消えていく後ろ姿に声がかかる。「洗濯物は……」「いれておいたよ。僕はそこまで信用ないのかな」そこ、とかごに入ったものを目で促すと、安堵したのかため息がもれる。「信用はしている」そうかい、嬉しいよ。「……寒い」「冷えるよ。はやく浴びておいで」ポットにお湯をつぎ足して、スイッチをいれる。カモミールがいいだろうか。「そうだ、アレクシス」「なんだい」濡れたくちびるが、妖艶に、笑みをえがく。一歩、踏みだしたことを確認した矢先、さっと目の前が真っ暗になる。目を見開く。これは、いったい。「ただいま」笑んでバスルームへ消えていく彼に、やられたと頭を抱えた。
02.小さな嘘
大人になったらね、という言葉が嘘だと知ったのは数年前だ。そんなつもりないくせに、子供を慰めるための文句だったことをいまでは理解している。大人ってずるい。そういうところが嫌いでもあり、惹かれる理由でもあるのかもしれない。「先生はいつになったら僕のお嫁さんになってくれるの?」あのころの約束が嘘だなんて、いまさらだ。「ダリル様はいつまでそんな嘘を鵜呑みにしていらっしゃるの」弱い頭ではないでしょう。馬鹿にする口調にいらっとするも、別にと口を尖らせた。「先生はいつ、あの約束を守ってくれるのかなーと思っただけだよ」「さあテキストを開いて。無駄話はここまでにしましょう」あ、まただ。不自然に会話を切ろうとする。じいっと瞳を見つめれば、居心地が悪いのか視線を思いきりそらされた。なるほど、これは脈ありなのかもしれない。広がってゆく笑みに耐えられず声を出せば、こつんと小突かれた。「待ってるよ、先生」手ぐすね引いて、自ら堕ちてくるその瞬間を、永い時のなかで。
03.毎朝のおはよう
お兄様、と何度も呼びかけられる声にまぶたをゆっくりと持ちあげた。真っ先に目に飛びこんできたのは清々しい笑顔を浮かべた妹で、ああ、朝かと挨拶を返す。ちゅ、とかわいらしい音をたてて頬に口づけられて、小さく笑いながら同じように口づけ。すると花がほころぶように笑うものだから、いつも自分の煩悩を悟られないように必死になる。「お兄様、今日も晴天です」「そうだね、いい空だ」「お兄様が隣にいるからだわ、私とても幸せ」銀糸がつややかにきらめいて、こぼれおちそうな蒼が細められる。僕もしあわせだ。君がいるならば、どこへだって。
04.一緒に居てね?
「藤原は弓道、やってみようと思ったことはないのか?」シンプルな茶色の矢筒を片手に問われる。どきんっと大きく心臓がはねて、お決まりの言葉に詰まるという芸当をしてしまった。「あ、あの」「焦らなくていいぞ、言いたいことがまとまってからでいいからな」ぽんぽんと軽く頭をたたかれて、思わず泣きそうになった。「先輩は、やさしい、ですね」「……そうだろうか。まあ、冷たくはないだろうが、やさしくもないな」それこそ、そうだろうか。首をかしげると、彼女は思いきり吹きだした。「これからも一緒にいるんだからな、自分でできるかぎりやさしくしているだけさ」
05.唇に花びら
甘い、それが最初の感想だった。ぺろっとくちびるを舐めれば、ふるりと身震い。「なにか食べたの?」「あ、ああ、チェリーパイを少し」「甘いはずだ」大学でお菓子作りの好きな学部友達にもらったものだというパイは、見た目もきれいで手作りのなかではかなり上出来の部類に入るものだった。彼だけがもらったのかと聞けば、みんなに配っていたというから内心ほっとしただなんて言えない。「そういえばそのチェリーパイのうえにのっていた花びらはどうしたの」見せてもらったとき、ひと切れのてっぺんに花びらが数枚、鎮座していたのだが。チェリーの赤に映える、あざやかな黄色だった。聞いたところによるとパンジーだそうだが、花びらはハートマークのかたちをしていた。「捨てた」「捨てた?」「食べられないだろう、食用じゃない」「情緒もなにもないね……」それは飾りとして楽しむものではないのか。ああ、でも。しばらく惚けていたからか、彼が口を開く。「――だ」ねえ、君は僕をどうしたいの。
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Author:空野海
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生誕:2月14日

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