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恋する五題
お題はcapriccio様より。オーマイダーリン、オーマイハニー!
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01.指先に心音
「どきどきする?」するっとなぞられた人差し指が、ぴくりとはねる。血塗れた彼の指先は指のつけ根から爪先までを愛おしむように、丁寧に、丁寧になぞってゆくものだから、否応にもびくびくと反応してしまう。そんな自分が浅ましいとさえ思った。「ふふ、感じてるの?」ねえ、正直に答えてよ。薄墨の瞳が楽しげに細められて、誘導されるように開いた口からは音にならない空気だけが抜けていく。はやくこの思いを伝えたいのに。ふと、触れられている指先をみやる。薄紅に染まった指先からは、思いがあふれ出たりはしないのだろうか。この甘い高鳴りが、伝わってしまえばいい。とろりとはちみつがたれるように、心臓からあふれんばかりの蜜がこぼれおちていることを。お願いがあるんだ。君に、君だけに聞いてほしいんだ。「つづるくん」舌っ足らずに名前を呼べば、なあにと小首をかしげる。その様に、きゅっと心臓が縮まった気がした。くるしい。「いますぐ、ぼくを」この苦しみから解放するため、君のやさしさを僕にぶつけておくれ。
02.二人だけの秘密
「これは僕らだけが知っていればいいことなんだよ」なにか言いかけようと開いた唇を、人差し指で制する。それが黙っていて、の合図になったのは、最近のことだ。「……俺たち、だけ」「そう」ぽつり、消えそうな声でつぶやく。「僕ら以外が知る必要はない。違う?」これは、僕らふたりが墓場までもっていかねばならないものだ。やさしく同意を求めれば、しばし逡巡したのち彼はそうだなと頷いた。「俺たちだけが、知っていればいい」誘導尋問のようだと思った。我ながら、なんて陳腐な。「……好きだよ」僕の想いも、君の想いも、すべて悟られてはいけない。この想いはふたりの間でだけ存在するもの。その瞬間だけ、この刹那だけ、赦されると思いたいのだ。
03.今だけのさよなら
小さな手がこちらに向かって思いきり振られているのを、シェリルはどこか他人事で眺めていた。ああ、自分はしばらくここを去るのか。目の前に馬車が止まっても、まだ信じられない気持ちでいる。離れたとき、ホームシックというやつに駆られるのだろうか。一度そらした視線を少年のいた場所へ戻してみれば、そこに人影はなく。執事によって部屋に連れ戻されでもしたか。「仕方のないお坊ちゃんだこと」ふっと笑みをこぼし、必要最低限のものだけが詰まったケースを持ちあげ、馬車へと乗りこむ。御者が鞭をふるった。そのとき、窓の外で人目も気にせずに泣きわめく少年が目に入る。涙でくしゃくしゃに歪んだ顔、絹のシャツは染みだらけ。「……いまだけ、いまだけよ」ぎゅっと力強く裾をつかむ。泣いてはいけない、ここで私が泣いては彼に示しがつかない。三年、たった三年だ。その期間で、私はもてるすべてを彼らに捧げる支度をしなければ。そうして家庭教師(カヴァネス)として、あの場所へ戻るのだ。「大丈夫、お父さん、私だってやれるわよ」だからもうすこし、もうすこしだけ待っていて。
04.どうする?
問われた意味がわからなかった。どうしてそんなことを、と返せば、曖昧に笑って誤魔化される。この話はおしまいとばかりに切りあげられて、思わずむっすりと黙りこんでしまった。「小真梨」意図せず、声が地を這う。大げさにびくりと肩を震わせて、彼女は立ち止まる。「僕は、面白くない冗談は嫌いです」「……うん」「冗談でも、笑えませんね」「うん、わかってる」でも、でもね、もしもの話はありえるの。どうなるかなんてわからない、だからこそ仮定の話をしたまでだと。「そんなもの、そのときにならないとわかりませんよ」仮定の話は、所詮は仮定なのだ。「そうならないように、僕は努めるつもりですよ。仮定が現実になる前に、へし折ってやります」考えて足がすくんで、動けなくなるなんて馬鹿馬鹿しい。「……小夜って、どうしてそんなに前向きなの?」そうだ、笑えばいい。君が笑っているかぎり、僕は迷わない。「前向きなのではありません。考えることをやめただけです」笑いなさい。笑う人は、必ずどこかで報われるのだと、僕は知っている。
05.指先に口付け
ちゅ、それはかわいらしい音をたてて、冷えた指先に落とされた。くちづけたそこから、熱が広がっていけばいいと思う。「くすぐったい」空五倍子の髪がけらけらと笑う彼にあわせて揺れている。彼は自分の指を、血に堕ちたものだと蔑む。はたしてそうだろうか。だとしたら、君をつなぎとめるために弱いふりをしようとする僕は。守られていれば、君は僕から離れられなくなる。自分のために、演じようとする僕はあまりに穢れた人間なのではないか。「……綴くんの指は、僕とは違うね」笑顔が固まって、訝しげにひそめられた眉に小さくくちづける。「僕とは、違うよ」指を絡めて、髪にさしいれて、その口をふさいだ。君は、君が思う以上にとてもきれいだ。血塗れたそのすべてがいとおしい。
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空野海

Author:空野海
since:2009.3.21
生誕:2月14日

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