FC2ブログ
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
闇を喰べてひややかに彼は笑う
 ――見つけた。美海は途端に笑みをもらした。両手につがえた愛用の双剣も、よろこびに震えたように思える。
 時刻は丑三つ時。黒と白の夜戦が始まると聞きつけ、鍛錬をしていたところに出撃命令。足取り軽く伝書鳩が運んできた場所に向かえば、見慣れた顔がずらりと並んでいた。
「ごきげんよう。皆様、腕はなまってないかしら」
「こんばんは、先輩! ごきげんよう、です!」
「夜は声が響く。静かに。……こんばんは、元気そうでなによりです」
「空蝉は全員集まったな? やることは伝書鳩が伝えたと思うから、説明は省く。今夜、黒と白が一戦交えるって話だ。遊撃部隊らしく、派手に暴れて戦況を荒らすのもひとつだと思ったが……今回は諜報も兼ねることになった。黒でも白でも些細な情報でもかまわない、得られるものはすべて仕入れてこい」
 隊長が地面に突き刺さっていた大ぶりの斧を抜きとった。けらけらと笑う後輩は、心底楽しそうで、いまにも駆けだしそうだ。うずうずしているのが伝わってくる。隣に控える少年は、無表情を崩そうとしない。ちらりと視線を向ければ、ため息をついたあとに肩をすくめる。面倒ですね、と言いたいのだろう。
 四方を木々に囲まれた坂の上で、じっと息を潜める。眼下では土ぼこりが舞いあがり、どちらかの軍が仕掛けた罠が始動したところだろう。はるか遠くから無数の足音が地面に振動を与えている。けして多いとはいえない、おそらく数えるほどの部隊だけが駆りだされているのだろう。
 美海はこのご時世を恨んだこともなければ、嘲笑ったこともない。けれど、こうして日本国の未来を争う様は、無様であまりにも哀れだと。頭の固い連中の考えることは、途方もなく馬鹿馬鹿しい。
 日本国はどちらに落ちてもよいと思う。どんな末路になったところで、おそらく、この国は生き延びることができるだろう。島国は、それだけで恵まれているものなのだ。
 白にも黒にも属さず、自由気ままに姿を隠して生きる軍。軍と呼べるほどの上層組織もなければ、大勢の仲間と出会ったこともない。許されたのは、限られたなかでの限られた人だけ。そのひとつが、いまこの場にそろう空蝉連の一同だ。
 わあっとあがったたくさんの声に、すうっと目を据える。この瞬間に漂う緊迫感は嫌いじゃない。
「……行くぞ」
 隊長が短く地面を蹴る。そのあとに同じく地面を蹴った少女は、腰から愛用の短刀を抜きながら笑い声を響かせて続いた。我が部隊きっての一騎当千、美海は彼女をそう評していた。
 先陣を切ったふたりを見届け、傍らの青年を見やれば、彼もまた坂を滑り降りていった。軽快に走りながら抜刀する、その器用さもさることながら、彼はあまり感情に左右されることがない。自分のなかで信念というものが確固たるものとしてあるからなのか、確かめたわけではないから定かではないけれど。
「面白くなるかしら」
 胸の高鳴り、激しく脈打つ心臓。戦況を覆すどんでん返し、飛沫をあげる緋色。美海の視界には、ちらちらと赤が舞う。
 あの色が、私の色。
 私の所属する、私の軍。
 隠密のように叩きこまれた抜き足で、軽やかに戦場を駆け抜ける。情報、といっても、こんななかではたいした収穫などないだろうと鼻で笑った矢先、目の端を細いなにかが過ぎ去った。いくらかの黒髪がはらはらと落ちて、頬を擦ったのかじんわりと痛む。それがレイピアだと認識したのは、地を這うようなささやきがもらされたからだ。
「お久しぶりですね……」
「あら、まさかこんなところで会うなんて。偶然ね」
 優雅にきれいな笑みを返せば、ゆらりと紫陽花が細められる。鋭いレイピアの切っ先がこちらへ向けられて、月光にきらめく銀糸が生をもってうごめいた。
「あなたの心臓をいただきにきました」
「面白い冗談ね」
 じゃらり、双剣が揺れる。柄の中心に飾られた紅玉が、月の光を吸いとって。
「遊んでくださる?」
 ほぼ同時に、足を地から離した。
Twitter企画、学生戦争より。
哉実くん、あかりちゃん、翔太郎くん、丑三くん、そして美海。
Secret
(非公開コメント受付中)

ありがとうございます…!
リプライより拝見させていただきました、双ノ樹です…!
返事が遅くなってすみません…凄く、ドキドキしながら読ませていただきました!
美海ちゃんVS丑三くんの対峙シーンが特にカッコよくて…この二人の戦いが気になります…二人ともレイピアと双剣を振り回して、美しくも火花散る戦いになりますね…!!

胸躍る素敵な小説を、しかも丑三を使って頂いて…
読んでいて凄く楽しかったです、本当にありがとうございました!
No title
双ノ樹紗羅さん
わざわざこちらまで足を運んでいていただいて、ありがとうございました!
ふたりとも鮮やかな青をまとっているので、絶対に対峙シーンは夜でなくては、と思ったのです……!
丑三くんの紫陽花色の瞳が本当にきれいで、火花を散らせてほしいものです。

こちらこそありがとうございました! 楽しかったです!
更新履歴


ようこそお越しくださいました (06/07)

朽葉の優等、黒檀と黒紅の交錯 (12/09)

黒檀の疑惑、朽葉の告白 (10/20)

朽葉が堕ちる、真白の行方 (10/18)

夢を見続けるこども (09/25)

プロフィール

空野海

Author:空野海
since:2009.3.21
生誕:2月14日

創作倉庫を兼ねる個人ブログサイト。
無断転載禁止。

最新記事
最新コメント
カテゴリ
アネモネの花びら様方
リンク
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

ブロ友なってやんよ☆

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。