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執着は契約違反
お題はrewrite様より。
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 大国ルーンアリア。朝議の煩わしさに小さく舌打ちをした第一王子ルドレノフは、毎日決まったことを延々と語り続ける臣下たちを一瞥した。くだらないと言ってしまえれば気も楽になるのだろうが、王太子という肩書きの手前、余計なことを言うわけにはいかない。それで王と王族の評判を落とすのだけは避けたかった。
 それにしてもと、その報告を真剣に聞き続ける父をちらりと見やった。時たま悩んでいる素振りを見せたり、安堵の表情を浮かべたり、少なかれどきちんと感情を表している。公の場では父といえども、彼は「王」としてルドレノフに接していた。どこか冷めたように感じられるものの、プライベートでは甘やかしてくれることを知っている。
 甘やかされるといっても、単なるわがままは許されない。どうしてそうするのか、なぜそれが必要なのかを説明しなければならないのだ。幼い頃はそれが面倒だと感じていたが、今となってはその行動の意味を理解しているつもりだ。
 過去に、王族の贅沢のせいで民衆が苦しめられ、挙句革命が起きた国があると聞く。王族はすべての国民の代表であり、王もまた民衆のひとりに過ぎないのだと。
「ほかに報告のある者は」
 威厳あるこの声がルドレノフは苦手だった。会議内に響き渡る低い声は、萎縮してしまう。
「これにて、朝議を終了する。各自、本日の任務に戻られよ」
 王が立つと同時に臣下も立ち上がり、去っていく王に頭を下げる。ここではルドレノフも彼らと同じ立場なので同様に頭を下げた。父がこちらを見たように感じたが、上げたときにはすでに退席していた。
「――父上!」
「おお、ルドレノフ。朝から呼んでくれるのは嬉しいが、走るでない」
「呼ばれた気がしたので」
「ふむ、気づいていたのならよろしい。他人の視線を感じられるようにならねばならんぞ。ひとまずは合格だな」
 この父は、よく王としての素質を予告なしに試してくる。それに気づかなければ夜に呼び出され、やんわりと注意されるのだ。やんわりなのは口調だけで、目は笑っていないのでルドレノフはもちろんのごとく苦手だった。
「それで、なにか御用でしたか」
「いやはや、隣国の姫君がルドレノフに会いたいと申し出ているようでな。私としては困ることもなかったので客室に通すように命じておいた。お前はこのあと稽古まで時間があっただろう? かわいらしいことではないか、会いに行ってあげるといい」
「……」
「そう渋い顔をするものでない。許嫁ではないか、彼女はお前にふさわしくなろうと健気にがんばっているとベーゼリ国王から文も届いていたぞ」
 ははっと軽やかに笑う父の手前、歪む顔を隠しきれないルドレノフは心の中で溜息をついた。
「女性を待たせるものではない、早く行きなさい」
「……わかりました、失礼します」
 ぺこりと一礼して、ゆったりした足取りで彼女が通されたという客室まで歩きはじめる。ルドレノフは振り返り父が見えなくなったことを確認すると、歩くスピードを速めずんずんと進んでいった。
 バタンと手荒く開け放った扉の向こう、肘かけソファに腰掛けていた彼女はぱっと立ち上がり、顔を輝かせた。途端、ルドレノフはうっとたじろぐ。
「ルドレノフ様! ああ、お会いしたかったですわ! 次の逢瀬まで待ちきれず、押しかけてしましたの、許してくださいな」
「次の逢瀬じゃない、次の隣国訪問だ! 来るなら文でも伝令でもよこしてからにしてくれと言ったじゃないか!」
「どうしてですの、許嫁じゃありませんか。会いに来るのにそんな回りくどいことする意味がわかりませんわ……!」
 ハンカチで涙を拭う仕草をする彼女に、ルドレノフはめまいを覚えた。
 彼女――ルチェチカは、ルーンアリアの隣国に位置するグロンデール王国の第二王女である。第一王女はすでに他国に嫁いでおり、彼女の四つ下に第一王子ヘーゼルがいる。
 ルドレノフはグロンデール王国を素晴らしい国だと評価していた。特に首都グランヴァールの美しさは言葉にできない麗しさを誇っている。王国自体、年中あたたかい気候でとても過ごしやすい。そのため時期によって楽しめる花々が変わり、家々に花が飾ってあるのが印象的な場所だった。
 ただ、ルドレノフはその王国の貴族があまり好きではない。貧富の差が激しいわけではないのだが、何度か訪れた際に目にした貴族のせいで印象はまったくといっていいほどよくないのだ。絢爛豪華な装飾、彼らはドレスから小物にいたるまでどれだけお金をかけたかを自慢する。高ければ高いほどその人の貴族としての価値が高いということになるらしい。馬鹿馬鹿しいと思う。
 その中で、王族であるルチェチカはその貴族たちの代表であるような人物だった。
 まず金銭感覚がずれている。王族はみな大方そうだろうとは思うのだが、彼女だけは別格だった。ドレスを何着持っているかの世界ではない。時期が来るごとに新調しているというのだから驚きだ。それが国民の税金でまかなわれていることになぜ気づかないのかと、ルドレノフは常に思っている。
「確かに君と僕は許嫁だ。親同士が決めたからな。……けど、最初に言ったはずだ。僕はまだ結婚するつもりはないし、もちろん君とするつもりはない。だからこれは『契約』で、時が来るまでお互い一定の距離を保とうと」
「そうね、そういう約束をしましたわね」
「なのに、どうして君はその契約を自ら破ろうとする?」
「あら、あれは簡単な口約束だったんじゃないですの? だってお父様たちが決めたのなら、私たちがなんと言おうと他人と結婚なんて無理ですわ。それに、ルーンアリアの王太子とグロンデール王女の婚礼なんて世間の注目の的じゃありませんか! 両国の素晴らしさが世に広まるまたとないチャンスですのよ」
「……だから、どうして」
 話をするのも面倒くさいと、ルドレノフは天を仰いだ。
執着するのは『契約』に入ってないぞ!
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Author:空野海
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生誕:2月14日

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