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機械人形は笑う
 キリキリキリ、と小さくネジを回す音がする。椅子に腰かけ、身動きひとつしない少女―――いや、機械人形は、ガラスの瞳に雪降る景色を映していた。窓の外ははらはらと雪が降っている。向かい側の屋根は白くなり、ぼんやりと灯りが見える。
「さあ、巻き終わったよ、ベアトリス」
 あたたかくやさしい声が背後から聞こえたと同時に、ベアトリスは人形とは思えぬ優雅なしぐさで立ちあがってみせた。そうして振り返り、声の主のほうを向くと彼は満足そうに頷いている。
「うん、さすがベアトリス。君は人形なんかじゃない。れっきとした女性だよ」
 恍惚とつぶやく彼はベアトリスにゆっくり手を伸ばし、陶器のように白い頬を撫でた。血の通っていない頬は冷たく、この寒さに触れたいと思う人間などいないのに。彼の手はベアトリスにとって異常なほどにあたたかく、それでいて切なくなる温度だった。
 彼女には、どれだけ切望してもこの温度は得られない。
「ベアトリス。今日はどんな髪型にしようか?」
 腰までの長い色素の薄い金髪を丁寧にすくいあげ、彼はテーブルに置いてあるブラシで一房一房梳いていく。ブラシの置いてあった隣の小箱には髪飾りが数えきれないほど入っている。宝石をあしらったものから、ベルベットのリボン、レースなどもついていてかわいらしい。
 慣れた手つきで髪を結っていく彼を感じながら、ベアトリスはゆっくりと目を閉じる。初めて彼を見たときの感情を、今でも鮮明に覚えている。所詮人形だと言われても、思われても、ベアトリスはあの感情の大切さを知っていたから。――否、彼が教えてくれたから。
「今日は王女様風にしてみたよ」
 嬉々として鏡を持ってくる彼に、ベアトリスはあたたかくなった。サイドからみつあみに結われた髪が頭上にもっていかれ、パールで円を描く髪飾りで固定される。そこから垂れる貝殻がしゃらんと涼しげな音をたてた。
「みつあみを後ろの髪と一緒に結わいて束ねて、パールの髪飾りでまとめてみたんだ。どうかな、お気に召したかな?」
 少し心配そうに顔を覗きこんでくるアイスブルーの瞳。人はその目を氷のようだと例えるけれど、その奥に情熱が灯っていることを知らない。決して消えることのない、熱い。
「ベアトリスがお気に召してくれたなら、僕はすごい嬉しいよ」
 思いきり抱きしめられる。あたたかい。
 人はこういうときに嬉しくて泣くのだろうと、ベアトリスは切なく思うのだ。機械人形の自分には、泣くことなどできない。だから代わりに、笑うのだ。
 彼が教えてくれた、心地よい想いとともに。
(叶わない願いだとわかっていても、)
(願わずにはいられない)
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(非公開コメント受付中)

『女性はたとえ自分を愛する男が野獣のようなものであろうと、 愛され崇められれば無関心ではいられないものだ』。…なんて昔の偉い人は言いましたが、たとえ血も涙もない女であっても愛されれば温かい感情に目覚めるのでしょうね(-ω-

こういう言い方もなんですが…。
私はリアル生活で、『知的・身体障がい者の子どもとどう向き合うか?』というテーマについて考えなければならない機会が多いです。その道に通じている人から言わせれば、「普通に接すればいい。できないことがあったら、ちょっとやり方を変えればいい」とのことだそうです。たとえば、知的障がいの為に字が上手く書けないという子どもなら、原稿用紙のような枠がついた字を使って『補助』すればよいという風に。憐憫だけ垂らしてできないと決めつけるのは、障がい者にとって屈辱であり束縛でしかない…と言ったニュアンスを、乙武さんの『五体不満足』で読んだことがあります。

長くなりましたが、泣くことが出来なくても笑うことができるこの機械人形は、人間と同じような心を持った幸せな少女だと私は思いました(・ω・*
Re: タイトルなし
sunさん
いつも考えさせられるコメントありがとうございます(*´∀`)

その言葉を読んで真っ先に「美女と野獣」が思い出されました。
あの話も、愛されることによって相手の姿など気にならなくなったので、その言葉は的確ですね!
「五体不満足」の本は自分も数年前に読んで考えさせられました。
人生に一度は読んだほうがいいと思っている一冊です。
大人があれこれと言葉をいうのは簡単ですが、これからの将来を担っていくのは子供たち。
もちろん大人だって考えなければならないことですが、今の子供たちにもそういったことを考えてほしいと思う自分がいます。
いや、そんな自分もまだまだ子供なのですが^^;

きっとそれは彼のおかげではないかと、こっそり思っております(*´`)
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生誕:2月14日

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