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ちいさな、やくそく
ちいさいやくそくでも、それはとても、だいじな。
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 そのお姫様は、ずっとそこに座っています。朝も、昼も、夜も、ずっとずっと。
 まるでなにかを待っているかのように、ただただ座っているのでした。
 その瞳は穏やかな波を保ち、静かに揺れています。あたたかみのある視線が、窓から見える景色を見つめていました。
 なぜ座っているのですかと、問いかける人はいません。お城の人は事情を知っているのか、誰ひとり、お姫様に声をかけません。
 それでも、お姫様は座っています。
 ひとりでいることも、話し相手がたまに来る小鳥だけでも、お姫様は平気でした。それくらい、座っていることに意味があったのです。それはお姫様にしか意味のないことでした。
 ある日、一羽の小鳥が窓枠にとまりました。つぶらな黒い目が、じっとお姫様を見つめています。お姫様はそっと微笑みかけ、その小鳥に手を伸ばしました。小鳥は嬉しそうにお姫様の膝に座ります。
 言葉は通じない、無言だけの空間。けれどお姫様にはその小鳥が話しているように見えて、この時間がなにより大好きでした。
 そのときです。いきなり小鳥が羽を震わせ、窓に向かってくちばしをつつきはじめました。何事かと、お姫様は窓を見ます。そこにはなにもないはずです。ないはず、でした。
 もやがかかったかのように窓の近くが揺れ、ぼんやりとなにかが浮びあがってきました。ゆらりゆらり、ゆっくりともやは形を作っていきます。そのもやが作った形に、お姫様は息をのみました。
『……久しぶりだね、リーチェ』
 ぼわんとゆったり響いていく声に、リーチェと呼ばれたお姫様はまるで時がとまったかのように目を見開いて身動きしません。懐かしそうに目を細めて、いきなり現れた彼は仕方なさそうに微笑みました。
『待たせてしまって、ごめんよ』
 悲しそうに、切なそうに微笑む彼を見て、お姫様は悟りました。
 ――彼はもう、死んでいるのだと。
「……待っていたのよ」
 お姫様の声は震えています。
「ずっと、ずっと……あなたが迎えにきてくれるのを、あの約束を、ずっと守って待っていたの」
 あなたが死んでいたことなんて知らずに、五年間ずっと。
『君と約束をして、その三ヶ月後に僕の国は攻め滅ぼされた。急襲だった。日が落ちる前にあっけなく没落した。そして王族は皆殺しだ。父と母はもちろん、兄と僕もその場で殺されてしまった。……でも、君との約束を果たせないまま、天国へ行くことはできない。だから僕は、傍で君を見守ろうと決めた』
 時がきたら、君を迎えに行こうと。
「とき……?」
『今がそのときだと悟った。君との約束を果たすときだと思った』
 彼は悲しそうに、微笑みました。
『僕の国を攻めた隣国が、君の国も狙っている。今夜、奇襲をかけるとその小鳥が教えてくれた』
 膝の上の小鳥は、どこか胸を張っているように見えます。
『だから一緒に』
「その続きは、言わなくてもいいの」
 答えは、決まっているのだから。
「私を、星の世界へ連れていって」
 お姫様は彼にそっと手を重ねました。実体のない彼だとしてもいいのです。
 あの遠い日の約束を、果たしてくれたのですから。
 そしてその夜、お姫様の国は奇襲に遭いました。あちこちから火の手があがります。王族はその場で手にかけられました。
 しかしお姫様だけはどこを探しても見つかりませんでした。
 ――『必ず君を、迎えに行くよ』
 ――『待ってるわ。ずっと、ずっと』
Secret
(非公開コメント受付中)

私は必要以上に深読みしてしまうクセがあるので、話半分に流してくださることをお願いしますm(__)m

お姫様は、王子様をずっと待っていたとありますが、私にはお姫様が王族であることに嫌気がさしているように思えました。最後に王族全員が手に掛けられますが、お姫様だけが見つからなかったと言うのは、王族であることをやめたのかな…なんて(ーωー

王族であることは何者かに葬られる危険と常に隣り合わせですからね。下手したら人間不信になってしまうかもしれません。だからこそ、王子様のように死んでも約束を守ってくれる人間以外はお姫様は信じることが出来ず、彼を待ってずっと座り続けていたのかと。

短い作品でしたが、とても印象深いお話でした(・∀・*
sunさん
深読み大歓迎でございます!w
読んでくださっただけでも嬉しすぎるのですが…!

わわわっ、なんて素敵な深読みですか…!
そうなのです、お姫様は王族であることに嫌気をさしていた描写をどう伝えようか試行錯誤していたのですが、こうやって読み取っていただけて光栄です^^*
印象深いとのこと、ありがとうございます!
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Author:空野海
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生誕:2月14日

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