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王は水神の巫女に想いをはせる
このまま、ここにいてくれればいいのに。
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 民がみな口をそろえて幸せだと謳う、都市ラマーン。その中心にそびえるラマーン王宮からは、今日も今日とてにぎやかな会話が繰り広げられていた。
「なあ、リールよ」
「なんですか陛下」
「陛下と呼ばずともよいと申したではないか。余のことはラジュでよいと」
「お断りします」
 きっぱりと即答したリールの返答に、ラジュと呼ばれた青年はしょんぼりと肩を落とす。それに頭に巻いているターバンの端がそれにつられて揺れ、懇願するような視線を黒曜石の瞳がじっとリールを見つめる。
 リールは彼をちらりと見やり、それから盛大に溜息を吐いた。
「……ラジュ陛下」
「なんだ?」
「あなたはこのラマーンの王です。そのような方を軽々しく名前でお呼びすることはできません。……それに、私は水神様の巫女です。本来ならば王宮にいることさえ許されないのですよ」
 細い絹糸のような長い黒髪を一房指に絡め、リールは色素の薄い青い瞳をラジュに向ける。ガラス玉のごとく光を集めて輝くリールの瞳は、ラジュのお気に入りだった。
 胸元から足先にかけてを覆う真っ白なサリー。腰回りには巫女が唯一身につけていいとされている真珠が数粒ちりばめられている。
 神殿で暮らしていたときはもっと質素な布だったのにと、リールは思わずにいられない。絹はあまりにも高級品で、一般市民には手が届かない代物だと知っているから、リールは汚せないと裾を軽く持ちあげて王宮内を歩くようにしていた。
「神殿は壊れてしまったから、建てなおすまでこちらでお世話になっているだけです」
 自分に言い聞かせるかのように、小さくつぶやく。
 リールが仕えていた神殿は、支えとなっていた柱が崩れてしまい、屋根までもが倒壊するという前代未聞の出来事だった。リールとしてはそんな簡単に柱が壊れるとは思っていない。誰かが細工でもしたのではないかと、心のどこかで思っていた。
 幸いにもその事故で怪我人は出なかったのだが、リールと同じように巫女として仕えていた数名の少女たちはどうすればいいのかわからず、絶望の淵に立たされていた。水神に仕える巫女として、本来ならば足を踏みいれてはならない王宮。ラマーンの王であるラジュに建てなおす間だけの滞在をすすめられ、リールをはじめとする巫女たちは客室を与えられた。
 この事態になっても、毎日三回の祈りは欠かさず巫女全員で行い、現在建てなおしに入っている神殿へ足を運び、動かすことの許されない水神の像を拭くなど、神殿に住んでいたころと変わらない生活を送っている。
 それなのになぜかリールはラジュに気に入られ、しまいには名前で呼んでもいいとまで言われる始末。ときどきこのラジュという青年は本当に王なのかと疑ってしまうほどだ。周りの諸国が若い聡明な王だとたたえている噂を耳にしたリールが、思わず吹きだしてしまうくらいに。
「神殿を建てなおしたら、リールは神殿へ戻るのだろう?」
 心なしか真剣とも取れる声音に、リールは戸惑いを隠してそうですねと頷いた。
「そうしたら、このように会えることもなくなるのか?」
 神殿は都市ラマーンのはずれに建っていた。国民ならば、水神に祈りをささげる者しか立ち寄らないような場所にひっそりと。
「陛下が街中へ、しかも神殿のようなはずれに行くことを臣下たちは許さないと思いますから、そうなりますね」
「余が王だからいけないのか?」
「普通、王は街中に出歩いたりしませんよ。変装でもするならば話は別ですが……」
「変装か、なるほど!」
 きらきらと面白いものを見つけたように目を輝かせたラジュを見て、リールはしまったと思った。
この王ならやりかねない。そして臣下に迷惑をかけまくるに違いない。
「……陛下」
「なんだ?」
「神殿へ来るのはご自由ですが、変装などせず護衛をつけるなどしてください。あと水神様に祈りをささげるつもりもないのに来ないでくださいね」
「わかっている!」
 嬉しそうに顔をほころばせる青年に、リールはかすかに笑う。
 諸国では戦争と呼ばれるものが勃発していると聞く。その渦中に、この青年だけは巻きこまれないでほしいと思わずにはいられなかった。
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(非公開コメント受付中)

つーづーきーはーッ!(*゚ノO゚)<オオオオォォォォォォォーーーーーイ!←
久しぶり!
海の小説流れが綺麗すぎる…!
描写も細かいから好きだ(´∀`*)

陛下は思い立ったら即行動しそうな人だな(笑
ミズマ。さん
続きは考えてたんですが長くなると読みにくいかなーと思ってあえて連想させるような終わりかたでしめましたww
いつかこれの続きを書いてみようかなとは思ってます(*´∀`)ノ



みさ
流れがきれいとかうああっ、ありがとー!><
描写を細かくしすぎて会話文より長くなることに定評があります←
即行動しますよ!w 周りの人たちが存分に振り回されるような、そんな陛下ですよ!w
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空野海

Author:空野海
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生誕:2月14日

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