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歌様へお礼小説!
「だからなんでいるのよ!」
「フェルディナンに無理を言ったんだ」
「公爵って意外と積極的なんですのね」
「ええ、公爵は意外としつこいので」
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「アンジェ、アンジェっ」
「ローズ、お茶会は逃げないわ。歩いてきても大丈夫よ」
 今フランスで流行のモスリンのドレスをひるがえしながら駆けてくる友人にくすくすと笑いをもらしながら、ヴィラアンジェは自らの向かい側の椅子をひいた。本来ならばメイドか執事を貴族のお茶会の席に同伴することが当然なのだが、気心知れた友人だということと、ふたりだけのお茶会に人を雇う必要はないだろうというヴィラアンジェの判断だった。両親に知れたら卒倒するだろうなと、ヴィラアンジェは内心で苦笑する。
「ごめんね、アンジェ……遅れちゃって」
「大幅な遅れじゃないからそんなに待っているわけでもないし、ローズはどんなに遅れても急いでくるってわかってたわ」
「もう急いだわ、まさかお父様の会議が長引くだなんて思っていなかったから……」
「また仕事についていっていたの?」
「ええ。鉱山は少しばかり危ないけど、中に入って仕事をするわけじゃないし……それに、お父様の仕事をいつ継いでもいいように勉強しないとって思ってるの」
「無理はしないでちょうだいね? あと鉱山は少しどころじゃなくて相当危険なところよ」
 嬉々として話す少女をたしなめるかのように、ヴィラアンジェは無理しないでと繰り返す。これは毎度、それこそ毎日のように言っているのだが、もちろんそれをローズがおとなしく受け入れるはずもなく……どうやらいつも付き添っているらしい。
 この間ヴィラアンジェはローズの父親に、仕事についてくることがいいことなのかと尋ねたことがあった。ローズは爵位を持たないが上流貴族としての扱いをされているので、女性が政治や仕事関連に対して口出しすることはあまり快く思われていない。上流貴族の扱いといっても、それは現国王が国の鉱山のほとんどを取りしきるローズの父親を敵に回したくないという思いがありありと行動に出ていて、普通ならば出席することさえ許されない宮廷舞踏会への参加を認めているのがなによりの証拠だ。もちろん貴族の中には「成りあがり」だと蔑む者もいるし、ローズのことを「成りあがりの令嬢」と皮肉めいた呼びかたをする者もいる。
 ただひとつ救いなのは、それをローズたちが気にしていないことだ。ローズは貴族が大嫌いだから、陰口を叩かれると感情を剥きだしにする。宮廷ではあまり褒められた態度ではないが、彼女は貴族ではないのだ。ヴェルサイユの暗黙ルールに染まる必要はまったくない。
 聞いたときのローズの父親は、苦笑して言った。「継いでくれるのはローズだけ。娘がやることに意義はない」と。けれどそれと同時に、後継ぎなど関係なく、ローズにはローズだけの幸せを築いてほしいとも。
「アンジェ? どうかした?」
「え? ……いいえ、なんでもないわ」
「そう? ならいいけど……それより、今日の茶菓子は珍しいところのものなのね。いつものルド・フェラールのものじゃないの? アンジェ、あそこの茶菓子お気に入りだったじゃない」
「たまには違うところのものでもいいかなと思ったのよ。いろいろなお店を見つけるのも楽しいものよ?」
「へえ……ふーん、そうなのねえ」
 どこか面白そうにローズの瞳が細められ、にこにこと絶えず笑顔を向けられる。時折ちらちらと茶菓子のほうを見ては、再び笑顔を向けられて。
「……なにかしら」
「ふふ、その茶菓子、フェルディナンにもらったものじゃなくて?」
「ち、違うわよ」
「本当? だってそれ、前にフェルディナンがもってきてくれたものに似ているんだもの。アンジェはどんな茶菓子を好むのかって、第一声がそれよ? アンジェ、すっかりフェルディナンに気に入られてしまったみたいね」
 もう黙っていても意味がないことを悟って、ヴィラアンジェは大きく溜息を吐いた。ローズはいまだに笑顔で笑い続けている。
 ギャバン―――フェルディナンと初めて会ったときの第一印象は、おそらく今まで出会った男性よりも最悪だったと思う。色素の薄い栗色の髪もはしばみ色の瞳も、どこか裏がありそうな出で立ちも、初めて感じた雰囲気も、なにもかもが気に入らなかった記憶があった。そういう人とあったとローズに話したら、あっさりと「それギャバン商会のフェルディナンで、私がよくお世話になっている人よ」と返された。もう二度と会うことはないと思っていただけに、妙なところでつながりがあることに驚いたものだ。
「最初は大嫌いの部類に入っていたのに。いつからそんなに気心知れた仲になったの?」
「今でも気心なんて知れていないわよ。勝手に来るんだもの。拒んでも拒んでも、懲りない人だわ」
「だから、それはアンジェを気に入ったからであって……好きになったんじゃない?」
「そうだとしたら、相当な物好きだわ」
「……アンジェきれいなのに」
「きれいなのはローズも同じでしょう? なんだったかしら、公爵に気に入られたとかなんとか……ああ、ムッシュドウェール公爵だったわね」
「アンジェ知ってる人だったの!? でも別になんの関係もないのよ? というより宮廷舞踏会で会って、お父様の仕事に興味があるんですって。だから最近はその人も仕事についてくるの。お父様の仕事を盗むつもりかと思って危険視しているけど。優男な振りしてるけど、貴族だもの。貴族なんてみんな同じよね」
 芳香な香りが漂うアッサムブレンドを口に運び、ローズは茶菓子をつまむ。
 ムッシュドウェール公爵という名は、前にフェルディナンが勝手に押しかけてきたときに聞いた名だ。あまり舞踏会で貴族の名前は覚えていなかったから、ムッシュドウェールの名を聞いても別段驚きはしなかったし、顔も出てこなかったのだから頷きようがない。けれど話に相槌を打っていくうち、フェルディナンはその公爵と親しいらしく、彼がローズのことを心底気に入ったということを話してくれたのだ。
 フェルディナン自身がローズと前々から親しくしているのは知っていたが、その公爵がどういう経緯でローズと知り合ったのかは教えてくれなかった。その詳細を、今ローズの口から知ることができたわけだが。
(つまり、私たちはなんだかんだつながりがあるということよね)
 ヴィラアンジェとローズは親友で、フェルディナンとムッシュドウェール公爵も親友で、フェルディナンとローズは取引先の子息同士、そしてローズはその公爵に気に入られて……あげだしたら切りがないと、ヴィラアンジェは小さくかぶりを振った。
「ムッシュドウェール公爵の名前は、前にフェルディナンが押しかけてきたときに聞いたのよ。公爵と彼は親友みたいだけど。ローズは公爵の名前をフェルディナンから聞いたことはなかったの?」
「ええ。フェルディナンはアンジェの話か、商品の話しかしないもの。逆に親友が貴族なことに驚きだわ」
「なら今度聞いてみたら? 公爵のことがわかるかもしれないわよ?」
「そうね! 弱点か弱みになるような情報があったらいいわ」
 その好奇心がどういった方向へ流れるのか、ヴィラアンジェは内心で小さく笑った。……と同時に、彼女の表情が急激に不機嫌になっていく。さく、さくと一定間隔で草を踏みしめてくる足音が、ふたりぶん聞こえたからだ。その音に気づいたのか、ローズもまたかすかに嫌悪感をあらわにする。
「ローズ嬢がいないからどこにいるかと探してしまったじゃないですか。まさかアンジェも一緒にいるとは……アンジェ、僕のおすすめした茶菓子を出してくれたんですね、光栄です」
「フェルディナン、ヴィラアンジェ殿がいやそうな顔をしているぞ、そこまでにしておけ。そのうち無視されることが目に見えている」
「ああ、その点は問題ないですよ公爵。普段から無視されることには慣れているので」
「……そうか」
「――で? フェルディナン、これはどういうことなの! なんで公爵を連れてくるんですの!? 来るならひとりで来なさいよ!」
「私がフェルディナンに頼んだんだ。ローズ嬢、気分を害されたならすまない」
 手の甲に軽く口付けをして敬意を示す貴族流の挨拶の仕方も、ローズには気に食わなかったらしい。さっと手をひき、テーブルの上に置いてあったナフキンで丁寧にそれを拭っている。ハンカチで拭くならまだしも、本来ならば手を拭くはずのもので拭くということは、貴族への冒涜に値する。公爵がまだ穏やかな貴族でよかったと、ヴィラアンジェは心底安心した。
「アンジェ、僕らもこのお茶会、参加してもいいですよね?」
「拒否権は?」
「拒否なんてされても、居座るに決まっているじゃないですか」
「フェルディナン、アンジェを簡単に落とせると思ったら大間違いなんだからね!」
「ローズ、あなたは本当に私の大切な親友だわ。フェルディナン、ここにいたいんだったらローズと公爵の間に座ってちょうだい」
「ヴィラアンジェ殿、それはどういう……」
「あら、私だってローズを簡単に差しあげるつもりはなくってよ?」
 ふたりだけで行うはずだったお茶会が、いつからこんなにも賑やかになったのか。
 もしかしたらこんな一日の過ごしかたもいいのかもしれないと、ヴィラアンジェはふと思ったのだった。



_______________
前にぼそっとつぶやいた小説を、歌様に捧げます!
この四人がもうもう大好きすぎて……楽しくわくわくしながら書かせていただきました!
愛って恐ろしいんだなと痛感した瞬間でした(^q^)
口調とかその他もろもろ間違ってたら言ってください! すぐ書き直します!

よかったら受け取ってくださいです(・ω・*)
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(非公開コメント受付中)

う、きゃ、ああああああっっ!


嬉し過ぎてパソコンの前で叫びそうになりました←
やっば、ローズ様可愛いっっ!公爵とうさんくさ商人の会話の応酬がもう好みドストライクwwww やばいね、可愛い過ぎだね!大好きd((
本当に本当にありがとうございます!!
うっふっふ、早速強奪してゆきますねッvv
Re: タイトルなし

な、なんだと…! 叫ぶとか恐れ多すぎるよおおお!(;ω;`)
ローズはナフキンで拭いてしまうくらい公爵を嫌っていたんですね最初ww
公爵とギャバン氏の会話は俺もドストライクなものでvv なんかこう、「やっば!」ってなると思うんだよ、この二人のコンビはww

強奪(笑)ありがとうございました!
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空野海

Author:空野海
since:2009.3.21
生誕:2月14日

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