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一周年感謝祭 霧咲ココロ様
アネモネの神話を元にしたもの/小説、詩、イラスト問わず(霧咲ココロ様リク)
より、小説。

ココロ様のみ、お持ち帰り可。
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「アプロディテさま」


 透き通った少年独特の声が神殿へ響き渡り、反響してすうっと消えていく。それを聞いてか否か、きらびやかな金の柱の影からゆっくりと女神は現れ、つけられた真珠の髪飾りがしゃらしゃらと涼やかな音をたてた。
 少年は女神にひとつ微笑みを向けて、軽やかにそちらへと駆けていく。それを愛しげに見つめた女神は、そんな少年を両手で受け止め抱きしめた。そして彼はどこかくすぐったそうに笑う。


「くすぐったいですよーっ」
「あら、アドニス。あなた大人っぽくなったわね」
「そうですかっ? アプロディテさまを守れるようになりたいので、狩猟に励んでいるからでしょうか」
「それは嬉しいわ。でも狩猟は危ないから気をつけてね」


 嬉々として話すアドニスとは対照的に、彼女は美麗な顔を曇らせて不安げにしている。そんな表情を読み取り、少年は「大丈夫ですよ」というように微笑み、そして小さな手で女神の頬を撫でた。
 たったそれだけで彼女の顔には笑みが戻る。


「そういえばアプロディテさま、昨日狩猟に出かけたところ、とても素敵な薔薇が咲いている場所があったんです。今日もこれから行くつもりなので、一輪持ち帰ってきますね!」
「怪我には気をつけてね? 薔薇も好きだけれど、あなたが無事に帰ってきてくれることがなによりも嬉しいわ」
「もちろんです! アプロディテさまを悲しませるようなことはしません」


 腕の中で少年は微笑んでみせる。彼の笑顔は神々でさえ一目おくほどの美しさだ。
 それを見て女神は複雑な笑みを浮かべ、つけられている髪飾りから一粒の真珠を外す。そして驚いている少年の手へとそれを握らせた。


「私の代わりよ。必ず無事に帰ってきてね」


 それは、女神の切実な願い。


「わかりました。僕は必ず無事に戻ってくると、愛と美の女神アプロディテさまに誓います」


 ぎゅっと手のひらを祈るように握り、少年は瞼を閉じる。そしてしばしの沈黙の後、アドニスは瞳を開き、まっすぐに女神を見つめた。それぞれの瞳にはお互いしか映っていない。


「では、行ってきます!」


 深く頭を下げ、アドニスは元気よく神殿を出て行った。
 ―――女神が少年を見たのは、これが最後だった。
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Author:空野海
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