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月光のかんばせ、彩ある薔薇
交わることのない逢瀬。(吸血鬼×死体愛好家少女)

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黒檀が燃えさかるとき
 目の前に獰猛な獣がいた。黒檀色の瞳がぎらぎらと燃えさかっている。危険だとか恐怖だとかは不思議と抱かなくて、そんな自分に内心、滑稽だと嘲笑った。だって、獣が夢に誘われるころ、獣の皮をかぶるのは自分のほうだ。
 ぎりぎりと力強く首元の服をつかまれていて、手は力みすぎて白んでいる。彼のほうが年下なのに、学生のころから力は圧倒的に弟に軍配があがっていた。身じろぎして手を外してみようと試みたものの一向に放してくれる気配はなくて、真也はあきらめのため息を吐く。
「どうしたの」
 返事はない。代わりにつかんでいた手がゆっくりとした動きで首筋を撫でていくのを感じていた。一度、まぶたが閉じられて、すっと眇められた瞳にぞわりと肌がさざめく。それが警鐘だと、真也は瞬時に理解した。自分が彼に対し、常人ではありえない欲を抱くことはこの性癖だからこそであり、彼が自分にそのような欲をぶつけることなどないはずだ。少なくとも、真也の記憶では弟は「まとも」な人間だった。
 彼も、まともではなかったということなのか。そんなはずはないと、かぶりを振って否定したかった。
「ねえ」
「黙ってくれ」
 開いた口を、手のひらで制される。こちらに主導権はないと言いたいのか。手綱を握るのは好きだが、握られるのは好きではない。むっすり、黙りこんだのが珍しかったのか、弟はふっと息を吐いて笑う。
「兄貴がそうやって、面白くない顔をするのは久しぶりに見た」
「実際に面白くないよ。……なんの冗談?」
 わざと大げさに首をかしげてみせる。口元はきちんと、いつものように弧をえがいて。骨ばった指が首筋をなぞり、耳殻に触れた。緩慢な動きはなにかを確かめるように肌をすべっていて、それが兄弟間で行なわれるべきものではないことは誰が見ても歴然だった。
 ただ、自分はその行為をすでに試してしまっている。
 悪くいってしまえば、性癖を堪能し、欲を処理するのに弟がもっとも便利だった。眠りも深く、夢から覚めることはほぼないに等しい。彼はいまでも寝起きに気だるくなることが自分のせいだとは気づいておらず、そのことをちらと聞いたときも、寝起きだからじゃないのと適当にはぐらかしたものだ。
「……試させてほしいことがある」
「いやだと言ったら?」
 その続きは、言わずともわかっている。
「一度だけでいい。確かめられたら、それでいい」
「そう、残念だ」
 僕は、主導権を握られるのが嫌いなんだ。
 絞りだすようにつぶやかれた言葉に淡々と返して、にっこりと笑む。振りあげた手刀が見事に急所を直撃して、彼は崩れ落ちて倒れこんだ。謝りはしない。兄に逆らうなどと、一昔前の文句を連ねる。疑問は霧散して、枯葉色が彩を取り戻した。
 黒檀は、燃え尽きている。
Twitterでのうちよそ創作:「それが僕らの愛だから」より、桐生兄弟。
恋する五題そのさん
お題はcapriccio様より。恋って摩訶不思議。

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黒紅の交錯
 ふらりと立ち寄ったカフェで、たまたま見かけた女性。艶やかな濃い藍の黒紅をなびかせ、いらっしゃいませと涼やかな声を響かせる彼女を、純粋に愛おしいと思った。持ち前の明るさは天性のものなのか、喧騒の最中でも好感がもてた。
 何度か足を運び、知り得たものは彼女の名前と年齢。医大生だそうだ。立派だねと笑いかけたら、そんなことはないですよとありきたりな返答がなされた。いまはネイリストという美容関係の職種に携わっているものの、専門学校に通っていたころは目標などないに等しかった自分からすれば、彼女の生きかたは晴れ晴れしていると感じる。
 くるくるとよく動くものだ。頬杖をつきながら彼女を見守る――もとい、観察する。屈託のない笑顔を振りまき、オーダーに挨拶にと飛びまわるように動きまわって、それでも疲れも微塵も感じさせない。人間としては合格なのだろうなと、ぼんやり考えた。
 コップに口をつける。ひんやりと喉を潤していく感覚に酔いながら、眠ってくれないかなとつぶやいた。定員と客という立場では絶対に見られることのないその姿に恋焦がれて仕方がない。彼女はどう安らかな眠りにつくのだろう。呼吸は、仕草は、眠るうえで興奮材料となる要素を思い浮かべて、口角があがるのを手で必死に抑えこんだ。
「そういえば桐生さん」
「なあに?」
「この間、一緒にきていた弟さんなんですけど」
 見ていたことに気づいて、彼女がテーブルへ近寄ってくる。その手にはお冷が入ったポットを抱えていて、おそらくおかわりを要求していると思ったのだろう。幸いにも、欲に翻弄されていて中身はなくなっている。
 コップを相手に差しだしながら、首をかしげた。確かに、つい先日、弟を連れてここへきた。いやがる彼を無理やりといった具合に。彼女にもっと踏みこむには、と考えていたけれど、まさか彼女のほうから申し出てくるなんて。ゆるむ口元を隠せない。
「たっくんがどうかした?」
「いえ、面白そうな人だったので、また連れてきてくれないかなって」
「いいよ。引きずってでも連れてくるね」
「桐生さんって、結構、強引ですよね……」
 さらさらとコップに流れてゆく水が目の端に映る。弟を連れてくれば、この関係に進展が望めるとあらば利用しない手はないだろう。親しくなれば、彼女は眠ってくれるだろうか。その様が好みだったらいいと願わずにはいられない。
「なら、また近々、お待ちしてます」
 小さく笑って踵を返す。その背中にひらひらと手を振りながら、携帯を取りだして、弟へ短い文章をうった。距離が近づいて、自分の目の前でふたりが眠りに落ちてくれれば。これ以上の喜びはない。
 計画的に、じわじわと。目的のために。木の葉色の瞳が妖しく輝く。絹糸を指に絡め、真也はゆっくりと微笑んだ。
Twitterでのうちよそ創作:「それが僕らの愛だから」より。
皮肉に残るはましろな世界
ふたつのお題は選択式御題様より。いとしいぼくの白よ。

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ようこそお越しくださいました (06/07)

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黒檀の疑惑、朽葉の告白 (10/20)

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空野海

Author:空野海
since:2009.3.21
生誕:2月14日

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